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生産と経営

平成18年頃より、この地域の個人農家が法人化するケースが増加しました。

当時の小泉首相が、国際競争力をつけるために、農家の大規模化を奨励したからです。

この地域では、水稲の他、転作作物として大豆・麦を作付しているところが多く、ほとんど全量を農協に出荷していました。

それ以前にすでに法人化していた農家が、うちの顧問先だった縁で、石巻市に合併した旧町のうち、ある町の農業法人のほとんどが、うちの事務所の顧問先となりました。

それらの法人は、それ以前は、近所の気の合う農家数件で生産組合を組織し、ある程度の計数管理も自分たちで実施していました。

しかし、法人化するということで、さらにきちんとした経理、そして経営を指導してほしいという依頼が、うちの事務所にあり、毎月、訪問するということになりました。

法人化し、これまでと大幅に変わったことは、毎月、給料として、生活費が保障される、ということです。

これまでは、生産組合の決算をし、その余剰金を、面積等の割合で配分し、個人の所得税の申告時には、事業所得として課税対象になっていました。

それらが、法人になると、法人の費用となり、個人では給与所得として、給与所得控除後の金額が課税対象となります。

法人としても、従事員への配分が決まっているので、事業計画が立てやすくなります。

農業は、その作物の収穫時期には収入がありますが、そうでない時期は無収入です。

あらかじめ分かっていることなのですが、年間を通じて収入が入るように働いている法人は、個人の給料もある程度確保した上に、法人としても利益が出るようになりました。

私の見る限り、法人化したからといって、必ずしも、そこで働く人たちの働き方が変わる、ということはありません(本当は少し変わってほしいのですが)。

この地域のことに限っていえばですが、農家は「生産者」でしかありませんでした。

「経営」は、それに近いことを、「農協」がやっていたのです。

仕入・販売・生産計画・資金計画・融資の申込み・代金の精算・決算・申告、などの業務です。

しかし、それが、個々の農家の「利益最大化」を追求していたか、というと、必ずしもそうではない、と思います。

漁業は、どうでしょうか?

漁業者が、震災後、本当に単独で再建できるでしょうか?

これまで、「生産」だけをしていればよかったのに、急にそれ以外のことも、自分だけでできるでしょうか?

後継者がなぜ不足しているのか、それは、仕事の内容だけでなく、生活が安定していないからです。

リスクに見合った生活のレベルになっていないからです。

さらに、今、生産していればある程度生活できた、という、震災前の生活と同じ状態でないことは、明白です。

漁協の考えは、「漁業権を与える代わりに、全量を漁協に出荷する」というものです。

しかし、それで、漁協が「この製品に付加価値をつけて、ブランド化する」等、この地域の製品の販売価格を上げるような戦略を考えてくれていたでしょうか?

個々の漁業者の生活水準を上げる、ということが、漁協の使命となっていたでしょうか?

ちなみに、平成19年のデータですが、生産量は、宮城県は全国2位ですが、生産額は全国5位に甘んじています。

つまり、「薄利多売」型の漁業だと言えます。

また、県内の漁業者数は、平成5年は17,599人ですが、平成20年になると9,753人に減少しています。

そのうち、40~59歳までの働き盛りの世代の割合は、平成5年では46.7%、60歳以上は18.9%でしたが、平成20年になると、40~59歳の割合は32.8%、60歳以上は37.6%と、高齢化が進んでいます。

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同業者で力を合わせて組織を作る、あるいは、他人のノウハウを借りる、ということも、こういう事態になってしまった今、考えなければならない、と思います。

しかし、それだけにすがりっきりということでなく、その中で、自分たちのやり方を通していけばいいのではないか、と思うのです。

それが、本当の「漁業者としての知恵」なのではないでしょうか?

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コメント

その通りですよね。
漁業権のニュースを見るにたびに漁業権の保有者の方がいう
法人化のデメリットが理解できません。
メディア側もその点を追求しない。
本当に復興出来るんですかね。

投稿: 避難民A | 2011年5月16日 (月) 22時25分

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